束縛+甘い言葉責め=溜息

 突然のことに戸惑いはしたが、悪い気は全くしなかった。車を持ったスーツの大人に告白されたのだから。

 しかも、ちゃんと名刺も出してくれている。

「えっ、とっ、突然で……」

 笑いながら私は返した。

「ビックリさせて、ごめんね」

 吉住は、にっこりわらって謝った。

「……」

 真紀は少し俯いて、頷く。

「大学生?」

 吉住の問いに、真紀は

「高3です」

と、正直に答えた。

「高校生なんだ……てっきり大学生と思ってた……」

 この時、吉住は、27。大学生なら大丈夫だと踏んだのだろうが、あいにくまだ高校生と知り、少し戸惑ったように見えた。

「もし、良かったら、少し話しようか。ドライブがてら」

 吉住は笑顔を絶やさなかった。

 そのせいで、私はすぐに自転車を手放してしまった。

 今考えれば、得体の知れない男の車にほいほい入ってしまう自分が恐ろしいが、あの時は、吉住が憧れの大人に見えて仕方なかった。

放課後になると、左ハンドルのBMで毎日学校へ迎えに来てくれて、毎日会って、夜まで話をした。

 その後、吉住が出勤しても物足りず、メールを送り、深夜に返信が来るのを待っていた。

 ベッドで眠りにつきながら、着信音を聞くのが、楽しみで仕方なかった。

 その頃、吉住は2店舗目を出したところで、この上ない忙しさだったのだろうが、そんな気配は全く感じさせなかった。

 いや、若すぎて、感じられなかったのかもしれない。

 会いたい。

 ただそれだけだった。どこに行きたいとも、何が欲しいとも、思わない。ただ、会いたいだけだった。

 そのうち、私が大学へ行く日が近付いてきた。

 大阪の大学へ行くことは、最初から言ってあったので、遠距離恋愛になるものだとばかり思っていた。

 ところが、高校を卒業した時、

「結婚してほしい」

と、プロポーズをされた。
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