束縛+甘い言葉責め=溜息
妊娠という名の束縛
三男が生まれた後は、年子の3人の世話で朝も昼も夜もなく、吉住の世話などする暇も当然なく、子供と寝て起きる生活になっていた。
買い物に出ることもなかなかできず、5年前の結婚式に来てくれていた友人の結婚式にも、吉住の3店舗目の店のオープン日だったため、行きそびれた。
それが、ずっと悲しくて仕方なかった。
結婚式に出られなかったということよりも、後で送られてきた写真に、みんながオシャレをして、澄まして映っていることが羨ましかった。
自分は毎日、汚れてもいいティシャツにジーパンをはいて、外で子供を遊ばせたり、ミルクを与えたり、おむつを替えたりすることで、時間が過ぎてしまっている。
吉住が休みの日はみんなで買い物に行くこともできたが、アクセサリーなど、赤ちゃんが触って危ない物はつけることができないし、オシャレも低俗レベルだった。
「……働きに出たい」
吉住が毎朝疲れて帰って来る姿を見て、そう言ったことは一度や二度ではなかった。
子供を預けて、外で自由に動き回る吉住が羨ましくて仕方なかった。
その度に吉住に
「働きには出なくていいよ。俺がちゃんと食べさせていくから」
と、当然のように言われた。
吉住の店が軌道に乗っているので、家計はもちろん安定している。高級スーパーも当然のように行くし、外車もキャッシュで払い終え、家のローンも繰り上げ返済できている。
夏はマリンジェットにクルーザー、冬はスキーにスノボー。遊びにもお金をかけられるし、洋服や持ち物を節約しなければならないことも、特にない。
だけど、そうじゃなくて。
「修ちゃんのお店、少し手伝うとかでいいし。子供は保育園にも預けられるから」
今日の朝は、更に現実的になおかつ控えめに言っても、
「僕の店は基本夜だから昼は仕事はない」
と、言い返された。本当は今、昼のランチの本格導入が決まったばかりで、昼も仕事があることを直から聞いていたのに、隠すつもりなんだと、腹が立った。
「……じやあ、他探す」
「あのね、こんな小さい子、他人に預けていてもすぐ熱出るし。その度に仕事休まないといけないんだからね。気安く雇ってくれるところなんかないよ」
吉住はじっとこちらを見つめて言った。
「ちょっとでいいから……。週1回の仕事とか、そういうのでもいいし」
「そんな仕事ないよ。最低でも3日くらい入らないと。でも公立の保育園に預けるのは確か、就労日数が20日くらいは必要なんだよ。全然足りない」
「…………」
そこを、吉住の権力でなんとかしてくれればいいのに。
「じゃあ聞くけど、何で働きたいの? 生活費は足りてるよね? 足りない?」
吉住はこちらを見つめて聞いた。
「足りてる。けど、そんなんじゃなくて。私も、自分だけで何かする時間が欲しいし」
「それは仕事じゃないよ、趣味の時間」
「そうじゃなくて! 私も、子供預けて仕事がしたい。何かしたい。なんでもいいから!」
「何もしなくていいよ、真紀さんは。ここの家でずっといてくれたら」
「それが嫌なの!」
私は言い切った。
「毎日子供の世話ばっかで嫌だ! どっか行きたい」
吉住は溜息を吐いてから言った。
「なら、今度の休み、どっか行こう。真紀さんが行きたいところに」
「…………」
子供が同伴するのは必須だ。
「上2人は直に預けよう。3人もはちょっと無理だけど」
「直君に預けるのも気遣うし! 悪いし……。せっかくの休みなのに。そんなら、保育園の先生に預けたら、2人きりで行けるじゃん」
私は吉住を見つめた。
「僕は真紀さんを働かせないつもりで、結婚したんだからね、お義父さんやお義母さんにも苦労はさせないって約束してる」
「そんなの苦労じゃない! 私は働きたいって言ってるのに!」
歯を食いしばって大声で反論するだけして、部屋を出た。
喉の奥が熱くなり、目から涙が流れてくる。
二階の寝室に入り、ベッドの上にごろんと転がった。子供たちはまだ、下の和室で寝ている。
少しだけ、吉住にみていてもらおう。
なのに、トントンと階段を昇る音がすぐに聞こえた。
買い物に出ることもなかなかできず、5年前の結婚式に来てくれていた友人の結婚式にも、吉住の3店舗目の店のオープン日だったため、行きそびれた。
それが、ずっと悲しくて仕方なかった。
結婚式に出られなかったということよりも、後で送られてきた写真に、みんながオシャレをして、澄まして映っていることが羨ましかった。
自分は毎日、汚れてもいいティシャツにジーパンをはいて、外で子供を遊ばせたり、ミルクを与えたり、おむつを替えたりすることで、時間が過ぎてしまっている。
吉住が休みの日はみんなで買い物に行くこともできたが、アクセサリーなど、赤ちゃんが触って危ない物はつけることができないし、オシャレも低俗レベルだった。
「……働きに出たい」
吉住が毎朝疲れて帰って来る姿を見て、そう言ったことは一度や二度ではなかった。
子供を預けて、外で自由に動き回る吉住が羨ましくて仕方なかった。
その度に吉住に
「働きには出なくていいよ。俺がちゃんと食べさせていくから」
と、当然のように言われた。
吉住の店が軌道に乗っているので、家計はもちろん安定している。高級スーパーも当然のように行くし、外車もキャッシュで払い終え、家のローンも繰り上げ返済できている。
夏はマリンジェットにクルーザー、冬はスキーにスノボー。遊びにもお金をかけられるし、洋服や持ち物を節約しなければならないことも、特にない。
だけど、そうじゃなくて。
「修ちゃんのお店、少し手伝うとかでいいし。子供は保育園にも預けられるから」
今日の朝は、更に現実的になおかつ控えめに言っても、
「僕の店は基本夜だから昼は仕事はない」
と、言い返された。本当は今、昼のランチの本格導入が決まったばかりで、昼も仕事があることを直から聞いていたのに、隠すつもりなんだと、腹が立った。
「……じやあ、他探す」
「あのね、こんな小さい子、他人に預けていてもすぐ熱出るし。その度に仕事休まないといけないんだからね。気安く雇ってくれるところなんかないよ」
吉住はじっとこちらを見つめて言った。
「ちょっとでいいから……。週1回の仕事とか、そういうのでもいいし」
「そんな仕事ないよ。最低でも3日くらい入らないと。でも公立の保育園に預けるのは確か、就労日数が20日くらいは必要なんだよ。全然足りない」
「…………」
そこを、吉住の権力でなんとかしてくれればいいのに。
「じゃあ聞くけど、何で働きたいの? 生活費は足りてるよね? 足りない?」
吉住はこちらを見つめて聞いた。
「足りてる。けど、そんなんじゃなくて。私も、自分だけで何かする時間が欲しいし」
「それは仕事じゃないよ、趣味の時間」
「そうじゃなくて! 私も、子供預けて仕事がしたい。何かしたい。なんでもいいから!」
「何もしなくていいよ、真紀さんは。ここの家でずっといてくれたら」
「それが嫌なの!」
私は言い切った。
「毎日子供の世話ばっかで嫌だ! どっか行きたい」
吉住は溜息を吐いてから言った。
「なら、今度の休み、どっか行こう。真紀さんが行きたいところに」
「…………」
子供が同伴するのは必須だ。
「上2人は直に預けよう。3人もはちょっと無理だけど」
「直君に預けるのも気遣うし! 悪いし……。せっかくの休みなのに。そんなら、保育園の先生に預けたら、2人きりで行けるじゃん」
私は吉住を見つめた。
「僕は真紀さんを働かせないつもりで、結婚したんだからね、お義父さんやお義母さんにも苦労はさせないって約束してる」
「そんなの苦労じゃない! 私は働きたいって言ってるのに!」
歯を食いしばって大声で反論するだけして、部屋を出た。
喉の奥が熱くなり、目から涙が流れてくる。
二階の寝室に入り、ベッドの上にごろんと転がった。子供たちはまだ、下の和室で寝ている。
少しだけ、吉住にみていてもらおう。
なのに、トントンと階段を昇る音がすぐに聞こえた。