清らかな星の朝
さっきの衝撃を受けて、まだそこらに転がっていたらしい、俺のボールペン。
俺に向かって伸びるのは、その黒が引き立つ、白い腕だった。
自分の黒くゴツゴツした腕とは全く別のイキモノみたいな、血管すら、透き通って見えそうな白。
ボールペンを拾ってくれた宝田は、とても静かに、俺の手のひらにのせた。
…壊れやすいモノのように、そうっと。
今年の夏は暑い。
去年も暑かったが、それにも増して。
入道雲がそれは立派にもくもくと立ち上がって、バリケード。まるで風の行く手を阻んでいるかのように見える。
教室を囲うカーテンは、無風のせいでその身軽さを失くし、強い日光のせいで心なしか、老けたように黄色みを増している。
無風。なびかないカーテン。肌にはりつく制服。夏服。
この夏服を着るのはもう、二回目だった。二年に進級し、俺と宝田は再び同じクラスになっていた。
しかも同じクラスなだけじゃなく、隣の席。一年の時は、一度も近くにならなかったのに。
距離はずいぶん近くて、でも挨拶を交わす程度でしか、宝田の声を聞くことはない。
…だからだろうか。
さっき呼ばれたばかりの自分の名前が、強く打ち付けられた鐘の音のように、ずっと響いている。