清らかな星の朝
右手の指先で、返ってきたばかりのボールペンを転がす。
ぎゅっと握ると、柔らかい手のひらに食い込む、ぬるいプラスチックの硬さ。
ノートを開き、真っ白なページに向かう。
先生が大きな声で何か言っているけれど、その内容は頭には入ってこない。
遠くの方の蝉の鳴き声が、袖からむき出しになった皮膚をヒリヒリさせて。ふと、視線を移した窓ガラス。
その枠は、青い空を額縁の中の絵のように囲っていて。とても清々しい夏の風景は、見事に一枚の絵画となっていた。
”──ここまで来て同じクラスかよ。”
その、嬉しさが隠しきれていない悪態を、もう一度聞くことはなかった。
もし同じクラスだったとしても、多分、聞かなかったと思う。
星治は三組。高校の二年になって初めて、クラスが分かれた。
毎日のようだった顔を合わせる機会は、ずいぶん減った。それだけじゃない。
”宝田と、付き合うことんなった”
…星治とは、去年の夏からほとんど、話していない。