【タイトル未定】
何かが音を立てて切れたような気がした。
「あんたさあ!人が話しかけてるのになんなのよ、その態度は。朝からずっとだよ?普通の会話くらいしなさいよ!」
まくし立てるように言い放つと、ふふっと笑い声が返ってきた。
グーに握った右手を口元に据えて、笑ったままの彼はただ一言、だけどその目はしっかりとあたしに向いたまま、言った。
「なんだ、怒るんじゃん」
は……?
意味がわからないという顔で池内くんを見ると、彼はまだ笑っている。
「ヘラヘラしてっからサイボーグかなんかかと思ったら怒ったりすんだなって」
その言葉が発されるちょうど同じ時に騒がしいのに気付いたらしい、池内くんの前の席のカズがあたしと池内くんの間に立っていた。
「結は笑ってる顔がいちばんいいんだよ!」
カズがちょっと怒ったような口調で話に割り込んできた。
なんだ、聞こえてたのか。
「てか!カズは部活!早く行かなきゃ遅刻するよ」
なんとなく不穏な空気を消し去ろうとカズを急かす。
カバンを肩に提げたカズは、じゃあな、と言って教室を出ていく。
「そういうこと、ね」
一連のやり取りを見た池内くんはそうつぶやいた。