【タイトル未定】
「あんたねえ……」
思わず手も声も震えるのをなんとか抑える。
「あたしはあんたが嫌いだっていうこの町で十七年間生きてきた。あたしはこの町が大好きなの!人が好きなもんをバカにすんなっ。バカっ!」
驚いたのか、池内くんが一瞬だけひるんだ。
「あたしが……。あたしがあんたをこの町を大好きって思わせてやるんだから」
ちょっとだけこぼれ落ちそうな涙を拭う。
「ムリだね。興味がない」
「ムリじゃない!大好きって言わせてみせるんだから!」
かくして、小さな町でのんびりと生きてきたあたしと謎の転校生、池内くんの物語は始まったのです。
もっともこの時のあたしには、これから先に待つ物語なんて、何ひとつ予想できなかったのですが。