愛故【完】
静かな教室で、蓮があたしに言った。
「…行きたいとこ。あるんだろ」
「え」
「…沙那が誰かと話してんの、聞いたんだよ」
がたんと机が鳴る。動揺して、手をぶつけてしまったらしい。
ひりひりと後からくる痛み。でも痛がってる場合じゃない。
ばっと蓮を見上げる。
そこにある瞳は、心なしかゆらりゆらりと揺れていた気がした。
「…沙那。…やりたいこと、あるだろ」
「、」
「…大学が別々になるの気にしてた?」
蓮はあくまでいつも通りにあたしに聞いてきた。
なんて答えれば良い?
首を左右に振って否定することも、上下に振って肯定することも出来なかった。