愛故【完】



静かな教室で、蓮があたしに言った。




「…行きたいとこ。あるんだろ」

「え」

「…沙那が誰かと話してんの、聞いたんだよ」




がたんと机が鳴る。動揺して、手をぶつけてしまったらしい。

ひりひりと後からくる痛み。でも痛がってる場合じゃない。


ばっと蓮を見上げる。
そこにある瞳は、心なしかゆらりゆらりと揺れていた気がした。




「…沙那。…やりたいこと、あるだろ」

「、」

「…大学が別々になるの気にしてた?」




蓮はあくまでいつも通りにあたしに聞いてきた。


なんて答えれば良い?
首を左右に振って否定することも、上下に振って肯定することも出来なかった。



< 5 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop