キミといた。
プロローグ
声がする。
声が聞こえる。
それはいつか私に響いた声だった気がする。
もう思い出せないくらい遠くて、声すらも曖昧であやふやな記憶。
思い出せないことに歯がゆくなるが、間に合わない。
頭の片隅に放置された欠片が疼く。
大丈夫、思い出せる。
そっと自分にそう言い聞かせる。
まだ色あせてない。
まだ腐り枯れてない。
思い出せる。
だってあれは、あたしの大切なものだから。
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