彼氏くんと彼女さんの事情
「大和、やろうぜ」
「うん」
俺とヤスは両腕を組み、片方ずつ後ろへ反る。
今は体育の授業中、前後で二人ペアをつくって準備運動をしている最中だ。
俺は腰をくの字に曲げたヤスに全体重を預け、足を浮かせて、真っ青な空を見上げる。
「っくしゅん」
さんさんと日光を降り注ぐ太陽を細目で見ていると、クシャミが出た。
すると、下で俺の身体を支えていたヤスが、女みたいなクシャミだなぁと笑う。
「うるさい」
「大和ってツンデレなの?」
「ツンデレじゃない」
「男に対してはツンデレじゃね?」
「は」
何なんだこいつは、朝っぱらから意味分からない。
「それはそうと、2日も俺と会えなくて寂しかったぁ?」
おどけた調子で、ヤスが訊いてきた。
今度は俺が下になり、ヤスの全体重が背中にのしかかる。
「……今日は金曜日だけど」
ヤスの言っている意味を理解することが出来ずに訊き返すと。
「………え、」
「?」
「……もしかして、気づかれてなかった!?」
「………何が」
俺の声色から全く理解していないことを察したのか、ヤスが「うそだろぉ」と驚きと切なさの混ざったような声で言う。
「俺、一昨日と昨日学校来てなかったんだけど」
「……そうだった?」
「ひ、酷い……」