彼氏くんと彼女さんの事情
「とにかく、俺のためにも早く学校来てよ」
「……うん。ヤスの為じゃないけど」
「なんだよー。俺と中原の扱いの差激しくね?」
「………」
準備運動を終え、先生の周りに集まっていく生徒がちらほら。俺たちも筋トレを終えて集合する。
砲丸投げの説明をする先生に目をやりながら、隣に座るヤスが小声で俺に囁いた。
「そういえばさ、中原また女子たちに何かされてるみたいだぞ」
「は?」
「(ちょ、声大きい…)」
ヤスが聞き捨てならないことを口にしたために、思わずいつもの音量で返してしまった。
数人の生徒が一瞬チラリとこちらを見たが、幸い先生は気づいていなかった。
今度は音量に注意して、ヤスに尋ねる。
「……誰が」
「他のクラスの女子だよ。多分、高倉の友達」
「………高倉?」
ヤスは、俺がその名を知っていること前提という調子で口にしたけれど、はじめて聞く名前である。
誰だそれは、と目で問いかけた。
「え、あいつじゃん、大和のこと好きだったやつ、」
「………?俺のこと好きなの、さゆりだけでしょ」
「………。まぁ、知らないならいいよ」
「?」