彼氏くんと彼女さんの事情
「び、びっくりしたぁ…
もう、嘘吐かないでよっ」
少し頬を膨らませながら言うと、高貴はこちらに目をやり馬鹿にしたように小さく笑う。
「何でもすぐ信じる方が悪い」
「う、…高貴のバーカ!」
「…優愛にだけは言われたくない」
全く、嘘つき魔の彼氏を持つと毎日毎日、騙されてばかりで大変だ。
そんなやり取りを交わしながら、私達はいつものように並んで学校へ向かう。
放課後に部活がある身としては、毎朝の二人でいるこの時間に一番幸せを感じる。
「…ね、手繋いでいい?」
私が遠慮がちに言うと高貴は、こちらをチラリと見て表情を一切変えることもなく「ん」と短く返事をし、手を私の方に差し出してくる。
「…へへっ」
私はヘラッと笑いながら、差し出されたその手を取り握った。
私達は、付き合ってもうすぐ一年になる。
今は別々のクラスだが、去年は同じクラスだったのだ。
モテる為かなり競争率の高い高貴と付き合うのは、大変だった。
付き合う前も付き合ってからも、女子からの圧力は凄まじいものだった。
今でも時々あの頃に思いを馳せ、「あぁ、あの頃は大変だったなぁ」とうるうるしている。
しかし、一年経った今では学校も公認のラブラブカップルである(勝手な推測だが)。
周りの女子に負けず、頑張っていて良かったなぁとつぐつぐ思う。