彼氏くんと彼女さんの事情
ずっと高貴はクールなんだと思っていた。
高貴が、そ、そんなこと思っていたなんて……!
しかし私が戸惑っている間にも、高貴は歩くスピードを緩めずにどんどん私との距離を広げていた。
私は急いで高貴の後を追う。
「高貴、待ってよう!」
少し走って、漸く高貴の背中に届きそうなほど近づいたと思ったら。
いきなり高貴が歩みを止めたため、背中にぶつかってしまった。
「わぁっ!な、なにっ…」
クルリと私の方を振り返った高貴を、驚いて見上げると。
次の瞬間、高貴の顔が目の前にあった。
不意打ちキス、だった。
「………っ!」
数ヶ月ぶりのキス。
軽く触れるだけの、フレンチキスだけれど。
優しくて甘かった。