彼氏くんと彼女さんの事情
高貴がゆっくり、唇を離した。
「………こ、こう…!」
恥ずかしくて身体全体から湯気が出そうだ。そんな私を見て高貴は、口元に弧を描きながら、クスリと笑った。
「キス、して欲しかったんだろ」
「………!!」
高貴がこんな事言うキャラだったなんて。何だか今日の高貴は、いつになく積極的な気がする……!
「ん」
「………!!」
高貴が私に、手を差し出した。
こ、高貴から……!
「ごめん、時間遅くなっちゃったな。家まで送ってく」
優しい瞳で言う。私は差し出された手をとった。
今日は、今までで一番嬉しい日かもしれない。
「……高貴、」
「ん?」
高貴を見上げて、ヘラッと笑いながら。
「高貴、大好きっ!」
「俺も」
私の彼氏は、嘘つきで愛情表現が凄く分かりにくいけれど。
とても優しくて、私の事を大切にしてくれる人です。
―嘘つき彼氏[完]―