彼氏くんと彼女さんの事情
見てたな。
こいつ今、教科書ではなく俺の顔を見てたな。
俺が呆れていると優愛は焦り出した。必死に言い訳をする。
「でもっ…ちゃんと分かったよっ!……えっと、取り敢えずnとkに1を代入すればいいんだよね!」
「全然わかってない」
常時お天気のこいつの脳みそに、数学というものを叩き込んでやろうと思ったのだが。
……無駄だった。
俺ははぁ、と一つ大きな溜め息をつく。
こんな調子で、ちゃんと生活を送れているのだろうか。いつも何を考えているのだろう。
「将来が心配」
そう呟くと、優愛はへらりと幸せそうな顔で笑って。
「高貴にお嫁に貰ってもらうから、大丈夫」
言ってからへへっと、照れ臭そうにする。
……この笑顔は、反則だ。