彼氏くんと彼女さんの事情
「あぁ、作ってから少し置いてた方が美味しくなるもんな」
言いながらふと思い出す。
あれ。俺が5時にここに来たときにも、エプロン着けてなかったっけ。
まさか。
「……朝からずっと作ってたの?」
「そうだよ!」
「…………(まじか)。」
無邪気に返事をする優愛を見ていると、親に褒められて得意になる小さな子供が頭に浮かんだ。
一体、そんなに長時間何をしていたのだろう。
具材を切っていたのか?カレーを煮込んでいたのか?……俺には理解が出来ない。
疑問に思いつつも優愛がスプーンを並べている様子を見つめていると。ふと、優愛の手に目が行った。
「(料理、しないんだな……)」
優愛の指に貼られた幾つもの痛々しい絆創膏。優愛のカレー作りの諸事情は未だ理解出来ないが、俺の為に頑張ってくれたことはわかった。
「初めての手作りカレーなの。食べて食べて」
「……いただきます」
スプーンでカレーライスを掬う。しかし、前から熱い視線を感じる。
チラッと前を見ると、やはり優愛がニコニコと嬉しそうな表情で俺を見ていた。
凄く期待されているようだ。