彼氏くんと彼女さんの事情
晩飯の後、二人でゆったりテレビを見ていると。
「今日は高貴と居れて楽しいな」
心から幸せそうな表情で呟く。
しかし本当に俺は、優愛にそんなに幸せを与えることが出来ているのだろうか。
「俺は別に楽しくないけど」
俺が嘘を吐くと、途端に優愛はえぇ!?と、泣きそうな表情になった。
「……高貴、わ、私と居て楽しくない?」
「……嘘、楽しい」
“嘘”という二文字を発すると、優愛は安堵した様子で、しかし騙された事にプンプンと怒り出す。
「もー嘘吐かないでよ!」
「……だって優愛に嘘吐くと直ぐに信じて、面白いから」
「ひ、ひどいー!」
……嘘、だ。
優愛を騙して面白いなんて、思っていない。
俺が嘘を吐くのは、俺がひねくれているからだ。優愛の反応を見て楽しんでいるわけでは、ない。