彼氏くんと彼女さんの事情
「じゃあ俺、帰ります」
親御さんも帰ってきたことだし。
「そう、気を付けてね」
「はい」
ソファから立ち上がり、部活のバックの上に置いていた学ランを着る。この時間は肌寒いだろう。
バックを肩に掛けて玄関の方に歩いていくと、後ろから優愛がそろそろとついてくる。まだ、警戒しているのだろうか。
「お邪魔しましたー」
今日一番の声を出すと、リビングのドアからヒョコリと顔を出した優愛のお母さんが、はーいと返事をした。
そのまま優愛の家を出る。
ひんやりした外の空気にむき出しになった顔や手が触れ、ブルッと身震いをする。
……やっぱり肌寒い。
無言でドアの前に立つ優愛に俺は一言、
「じゃあ、おやすみ」
とだけ言い、薄着で外に出ている優愛に悪いと門に手を掛けようとすると。
「あ、あの、」
声に振り返ると、はにかむ優愛。俺は、ん?と首を傾げる。
「今日は来てくれて、ありがとう……」
「うん。俺の方こそ」
それだけかな、と思い再び門に手をかけようとした。
「………あ、あの」
「……何?」