ピアス
「記憶、戻るといいね:
 柚菜は言った。




 クリフは柚菜の言葉に対しては無言だった。


 記憶が戻らない方がいい場合もあるのではないか。むしろ今という何も知らない。自分を知らない者たちがいる国で、再出発をし、関係を構築していく幸せもあるのではないか。

  

 それらの思いが堂々巡りを繰り返し、不安になり、クリフはピアスに触れた。


 なぜだかクリフは気分が落ち着いた。
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