願い事、ひとつ
この夜の内訳
彼は永い恋をしていた。


私が彼と出会った時には、もう何年も好きでいるのだ、と言った。

彼の好きな人のことはよく知らない。

そのひとを思うと彼の真っ黒な瞳が潤むから、余程好きなのだろう、と思うくらいで。

私は聞かないし、彼も特に話したいわけではなさそうだった。

ただ黙ってそばにいる。

それだけを私は自分に許していた。
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