『スケッチブックにサヨナラ』〜短編〜
気が付くと、始発の電車が動き始めていた。戸上は遠くを見詰めて 溜息を付く。
戸上:『…そろそろ…時間だな』
佐倉:『…また、きっと逢えるよね?』
とっさに口を突いた言葉に 戸上は笑った。
戸上:『アホか…当たり前だろ(笑)』
佐倉:『…うん(笑)』
誰もいない駅のホームで 二人は最後のキスをした。『もう このまま逢えなくなる』そんな気がして ならなかったのだ。すると、戸上は前を向いたまま 私の手を握った。
戸上:『お前は 本当にイイ女だった(笑)』
突然の言葉に顔を上げた。
佐倉:『…そんな事ないよ…』
戸上:『いや、本当にイイ女だったよ。だから ここまで迎えに来たんだからさ』
佐倉:『…ありがとう』
戸上:『また、いつか逢おうな(笑)』
佐倉:『うん(笑)大ちゃんこそ、もう女を泣かせないようにね(笑)』
戸上:『うるせぇ(笑)』
発車の音楽がホームに響くと、戸上は電車に乗り込み 私の頬に触れた。
戸上:『ずっと好きだからな。俺の事、忘れるなよ(笑)』
そう言って、ポケットから 一枚の写真を取り出し 私に差し出した。受け取ると同時に ドアは閉まった。軽く右手を挙げ 微笑んだまま、大介は朝日の差す方へと去っていった。
< 23 / 24 >

この作品をシェア

pagetop