『スケッチブックにサヨナラ』〜短編〜
しかも、彼のレインコートはずぶ濡れだった為、こっちの服まですぶ濡れだ。
戸上:『あ、悪りぃ(笑)』
佐倉:『最低…』
戸上:『まぁいいじゃねぇか(笑)』

そう言って笑った。少しの会話を交わすと
戸上:『じゃ、行くぞ』
そう言って、戸上は歩き出した。
佐倉:『何処に?』
戸上:『俺んちに決まってるだろ?』
佐倉:『家?何処か行かないの?』
戸上:『あぁ…俺あんまり出歩くの好きじゃないんだ』
佐倉:『何それ』

駅を出て 小さな商店街を進む。戸上は 商店街の事、アトリエの事、自分の事、色々と話をしてくれた。しばらくして 細い路地を曲がると、小さなアパートに辿り着いた。
戸上:『ここだよ』
扉を開け 中に入ると、部屋の真ん中には大きなキャンバスに油絵の具、そしてラックには沢山のスケッチブックが置いてある。
佐倉:『うわぁ…』
そんな言葉しか出てこなかった。戸上の部屋は 少し殺風景な感じもしたが、『真剣に絵と向き合っている』と言った感じだった。
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