運命という絆
  三ヶ月後

「生徒会長が御乱心らしい…」

間近に迫る大学受験で自身の事で頭の中が一杯の筈の三年生を始め、学校中が拓真の話題で持ちきりとなる騒ぎとなってしまった…

「家庭の事情かな?色々あったし…でも、勿体無いよな、金銭的なら奨学金制度もあるけど会長は、そんな素振りも無かった様に見えたし?最近は尚更明るかったようだけど…」

「教育委員会迄、出てきたしなぁ…」

「米村の急な転勤も拓真が関与したとか…お陰で"スッ"とした生徒が大勢だし会長様々だけど…」

生徒会副会長の本多浩司が話している途中に、噂をすれば影と言われる様に"ガラガラ"と音を立てた扉から拓真が堂々と入って来た。

「此処でもか…」

拓真は、不敵な笑顔を浮かべ前へ進み本多の肩を"ポン"と叩いた。数人の生徒会役員が拓真を凝視するのをはっきりと感じる中、拓真は、言葉より制服のポケットから箱を取り出したかと思うと、次の瞬間には口にくわえた一本の煙草…

「拓真!マジか?家でしか吸わない筈じゃ…」

本多は慌て蓋めいてライターに火を着けるのを止めようとした。

「言葉よりこの方が早い…」

臆す事無く拓真は、点火したライターを口元に寄せると点火された煙草の先が赤く光った。

その行為を周りは唖然となって見詰めていた。

煙草を口から離し、堂々と鼻と口から紫煙を出し呟いた。

「これが俺…見た事が真実だよ」

手に持った煙草は次にポケットから出された携帯用灰皿に再び口を付ける事無く消され何も無かった様にポケットに仕舞われた。

「会長…」

書記を務める二年の藤田由美が両手を合わせ組みポツリと憧れの拓真に言った。喫煙の事実を知らない数人は度胆を抜かれた様に拓真に凝視を向けている。

「皆、くれぐれも真似はしない様に…只、気分転換に俺には必要で有り、心地は悪くない…」

「拓真!喘息を患ってたのに…決して身体に喫煙は良くないんじゃないの?」

医学部志望の一人が心配する様に言った。

「不思議な事に喫煙しだしたら喘息の発作は今迄、起きてないよ常識じゃ考えられないだろうけど…コレが現実!」

「あり得ない…けど見せ付けられたら、有りなんだろうね…拓真の度胸には敵わないよ」

「俺は進学はしないし皆より先に社会に出る事に決めてる!だから、今、見た事実を別に誰に話そうが認めるよ…決して聖人君人では無い俺の話を聴いて欲しい」

拓真流の統率力の芽が成長を始めた。
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