運命という絆
「先ず、俺のした事を教師にしろ友人なり帰宅して親に話したい衝動に駆られた者は此処から出て構わないし…そうして欲しい」

その言葉に歴代の会長の方々が陣取って居た席に何気無く腰を下ろしていた秋田(理工学部志望)が席を立った。

一堂の視線は、椅子が床に擦れる"ギィ~"と鳴った音に総ての瞳が拓真から、そちらに移動し、唾を"ゴクリ"と飲んだ。言葉自体は直ぐには、誰からも出なかった。

「会長!此処に座りなよ…今、この席はお前が座るべきだ。何か話があるんだろ」

その言葉に拓真を除く他の皆、胸を撫で降ろした。しかし、緊張の糸は決して切れた訳では無く創設以来「公立の進学校で、最高の纏まりと感動を呼んだ体育祭、文化祭を一日で行う合同祭で、事前のまだ未熟な若者達の「あ~だ!こうだ!」と熱い色々な意見交換の飛び交った各イベント役員を含めた会合とは違う雰囲気が、今の生徒会室を支配していた。

「じゃ…最初で最期の不良生徒会長として、座らせて戴きますか…」

特別に拘りは無いと思っていた席順だが、秋田の行為を素直に受け拓真は、その空けられた席に腰を下ろした。そして今迄とは違う深刻そうな苦い表情に変えた。

「俺と同じ行為をした奴が、この中に何人か居るね?」

突然の拓真の問いに男性だけの三年生役員は含み笑いをする者、下を向く者に別れた。

「先輩達…全員吸っているのですか?!」

その中で、唯一人の下級生で有り女子である由美は、てっきり喫煙の事と勘違いして生徒会室の面々を見回して驚いた声を挙げた。

「何で解ったんだよ?…校長?…それとも教育委員会で名前が出たのか?」

文学部志望の川合が、拓真に逆に問い質した。

「やっぱりか…」

拓真は、苦い表情のままで呟いた。

「偏差値の違いで気付いた…中間テストで出た数字が25…期末テストは30に上がっていた…この意味は中間を白紙で出した俺しか解らないから」

「参ったね…そんな所を見ているとは!…此処に居る俺達も皆、偏差値30だよ。会長と同じ事、皆やってみたかったんだ…皆、仲間じゃない?会長を好きだからこそ心配しているんだ俺達は!今の拓真は、大変じゃないか!急な母上の病死…それに、俺達の人生の師である父上迄が、失踪しているとは…?その上での、合同祭での拓真の統率力と徒競走リレーで、あの怪我の中での完走…あの場に居た皆、感動させたよ。正に伝説に値する…」


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