運命という絆
法学部志望で放送部長の前田が饒舌に訴えた。

「そうなのか…ありがとう。親に叱られなかったか?…」

拓真は、部屋の皆を冷静に見詰めながら気遣った。

「は、白紙って期末試験を先輩達は拒否したのですか?…私は、そんな事したら怖いです!それに会長の御両親が居なくなっちゃっていたなんて…」

由美は狼狽しながら素直な気持ちを言った。

「いやぁ、正直、怒られた…」「俺は病気になったかと心配された…」

拓真を見て皆、呟いたが、そこには、同士的な笑顔と覚悟があった。

「仲間って本当に有り難いな…どうやら腹を割って話が出来そうだ…
拓真は、今度は由美を見詰め口を開いた。「藤田…済まないが君は席を外してくれないか?いや…是非そうして欲しい。別に君の悪口を語る事は無いから…君は、来年度に此処の席に腰を下ろして欲しい人材だから…知らない方が良い事は有る…」

穏やかに拓真が藤田由美に願い出た。
この今の空気を読んだのか、由美は"コクリ"と頭を下げ作り笑いをし、拓真に一礼すると静かに生徒会室から退出した。


「では話をしようか…実は時間が、もう余り無いんだ……」

拓真は、先ず母の死別から父の失踪した理由迄を包み隠さず語り始めた。

 "合同祭"… 

全学年生徒が誰一人欠席しなかった唯一の開催。これも、拓真自身が学校自体が見て見ぬ振りをした不登校を続けていた生徒を説得し登校させた事が第一の偉業だった。そして暫く合同祭で"受験に影響するから"とPTAで(この時期に異性関係を意識させるという理由)遠慮させていた男女で手を繋ぐフォークダンスを復活させた。これもあちこちを説得させるのに苦労もあった…PTAは勿論、予備校や塾をサボって迄、夜のビルの反射を利用して好きな流行のダンスを練習していた生徒達をフォークダンスの指南役にさせて、リーダーシップを任せて合同祭での時間も午前、午後と時間も多く取った。
そして、徒競走では紅白に分け順位を競わせ、得点で競争意識を出させた。

全ては勉強が出来る事が一番では無く学と体…御互いに、秀でているものを尊敬し合おうと生徒会を始め合同祭各委員が大人抜きで決定したのである。

…そして合同祭も最高潮になった最後の種目、学年合同の800メートルリレーで運命の悪戯の様なアクシデント…全てが唯、息を呑み凝視した数分間は、DJばりの喋りっぷりを見せていた前田すら声を出せず見守っていた。


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