運命という絆
その主役は、やはり田中拓真だった…


「800mとは長くないか?…」「100m×8名、各学年から2名(男女一名)ずつ、これで6名…後の2名は学年、男女関係無しの選抜にしたい。紅白3組ずつの計6組…選抜組は陸上、野球、サッカー部の韋駄天様を各チームに振り分けたい。リレーはチームワークでの勝負…特別な意味と云うか、一人でも参加者を多くしたい」「リレーは、不思議と手に汗を握る競技だしね…チームのタイム差を縮める意味もあるか…」
「決を取ろう…賛成の方は挙手を!」

拓真の提案に殆どの挙手があった。中には最初、手を挙げない者も居たが、多くの挙手に圧されて渋々手を挙げ全員の賛成を取り付けた。
「全員賛成と云う事で…では次……」

拓真の説明による統率力は他の者を圧倒させる迫力も追随出来る者は居なかった…

迎えた合同祭は和やかに進み、最後の徒競走リレーの時間が近付いていた。

「やっと勝負出来るな!楽しみだった。会長との勝負…勉強じゃ遠い存在だけど…そして、ありがとう」
陸上部部長の和田が進み行くプログラムを見詰める拓真に声を掛けた。

「今日は、全力で走るよ!全てを此処に打ち込む…アンカー対決を俺も楽しみにしてる」
拓真も笑顔で応えた。
普段から放課後の教室から外を見詰めると陸上部の様子が一番、気になった。一生懸命、練習している部員達。かつて拓真も所属していたが、喘息と云う持病の為、母に運動部活動を止められ退部した経緯…
しかし、他界した天国の母に、今の自分を見て欲しい気持ちも強く、今日のリレーはチームのアンカーを任された事で良い緊張もある。
「ありがとう…か、良い言葉だ」
100m11秒台の俊足を誇った自分自身を試す良い機会だった。今じゃ、現役の和田には敵わないかも…と素直に謙虚に思える事を行方不明の父への感謝の想いもあった…

徒競走での得点は、拮抗し…紅白共に最後の徒競走リレーで決着が着く模様となり盛り上がりは、いよいよ最高潮となった。紅白併せて6チーム…実際、始まってみないと解らない程、実力的には伯仲していた。
興味は、生徒会長としての拓真と陸上部部長秋田とのアンカー争いに注がれる中で、遂にスターターピストルが鳴った…

やはり、リレーとなると参加者は勿論、応援にも力が入る抜きつ抜かれつの状況に併せて放送部長前田もヒートアップ気味に実況している。いよいよアンカー勝負となり最終走者達が順位毎に内側から並び始めた…
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