仮面

　それほど気を置かないように言った台詞は、今度は市川の動きを止めた。



　しかし市川は臆することなくすぐにビールを飲んでみせて、「えぇ。たまたま・・いや、探したらあったもので」と言って原田に微笑み掛けた。



　続けて「まさか俺を疑っていますか？」と言うと、原田は頭を左右に振りながら「いやいや、そんなつもりはないです」と言ってつくねを頬張った。




「あなたがジャーナリストで、偶然にも６年前の事件を追っている。ただそれだけだ。メモにあった坂井教授も殺されて。鎌田も数日前に殺されて」




　衝撃が走った。




　市川は口を大きく開けて、「鎌田が殺された？」と小さく原田の言葉を繰り返した。



　その様子を受けて原田は髪をガサガサと掻き、まだ知らなかったんですね、と呟いた。どこか失敗したような表情だった。



　市川はというと、普段なら「しめた！」なんて思ったかもしれないが、あまりの衝撃のあまりそうは思わなかった。




「まぁいつかわかることでしたから、いいか。殺されましたよ、日曜日に。まぁ鎌田だとわかったのは昨日ですがね」