仮面
「・・鎌田さんはこの県に住んでいたのですか?」



「いや、隣のN県です。まぁ殺され方を見たら同一犯とは言い難いが、関係はしていると思いますよ」




 そうため息混じりに言って、原田はビールに手を伸ばした。



「思いますよ」という言葉には、手掛かりらしきものはないが、メモに書かれている以上、上田の事件に絡んでいるはず、という推測に近いものを市川は感じ取った。



 つまり、殺され方もおそらく違う。




「そうなると、容疑者は、俺に、黒沢さん。それに野村、上田の母親に元恋人。あとは大家か・・」



「野村さんに会いましたか?」



「えっ?えぇ。今日の昼に」




「どうでした?」とすぐに言葉を発する原田の目は真剣で、かつ鋭くなり、一瞬市川を怯ませた。



 しかし原田から目を逸らすことなく、「不可思議な人でしたよ」と言ってビールを飲んだ。




「不可思議?どの辺りが?」



「えぇ。上田との関係が、そうです。もちろん嘘を言っているのかもしれません。ただ調べてみる価値はありますよ。無論、俺もそのつもりです」
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