仮面

　この言葉に嘘はなかった。



　そう思ったのは原田の口から鎌田の死亡を聞いてからだが、自分の違和感のことを考えれば調べる価値は十分にあると思っていた。




「わかりました、洗い直してみます。まぁ元々そのつもりでしたが・・強力お願いします」




　その言葉は、おそらく野村のアリバイを崩せない、ということだろう。



　そうでなければ一介のジャーナリストに協力してくれと頭は下げない。



　ただそれで市川は不安を抱いた。



　警察が見抜けなかったものを、自分が見抜くことができるのか、と。



　不安のあまり「やはり野村のアリバイは完璧でしたか」と、原田に探りを入れるようなことを口走った。



　原田は短い髪を掻きながら「えぇ、どうにも」と恥ずかしそうに言った。



　言葉の調子とは裏腹に、その表情には雲がかかっていた。




「・・殺され方が違ったのだと思いますが、メモ以外にも疑わしい人物を探して・・まぁ探しているでしょうね。鎌田はどんな人なんです？」



「２６歳の鬱病患者ですね。最近は仕事を辞めて、Ｎ県にある実家に住んでいたようです」