仮面
「ちょっと!大丈夫?」




 トイレから出るとおばちゃんが心配そうに、市川の顔を覗き込んできた。  


 市川の顔は青ざめていた。



 無理もない。初めて見た死体が、心臓が抜き出された変死体だったのは市川には強烈だった。




「そば、私が食べてもいいよ。無理しないで」



「・・いや、肉じゃなけりゃ食べられるよ」




 気分は最悪だったものの、これから警察が来て事情聴取されるのを考えると、少しでも胃に物を入れておきたかった。



 目撃証言くらいしか問われることがないだろうが、市川はこの事件を調べるつもりでいた。



 早く活動するためにも、今は無理してでも食事を採った方がいいだろう。



 市川はそう思い、一心不乱に出された食事を口の中に掻き込んだ。
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