仮面
 以前に義父、義母がいる家庭を市川なりに調査したことがあった。



 その多くは表面上、上手くいっているような感を受けたが、子供達は内心複雑だったようだ。



 特に思春期の子供は親の幸せを自分の幸せだと受け入れることが難しいように市川は受け取った。



 全てがそうだとは言えないが、被害者は高い確率で義母とは上手くいっていなかったのだろう。    



「まずいまずい。余計なことは後から考えろ、俺」




 被害者に同情する中、市川はそう言って自分の意識を事件に向け直した。



 部屋の様子を思い返すと、市川は被害者の性格を推測させるような物に気がついた。



 被害者の部屋の中は無駄な物が少なくすっきりとして、さらに棚に収められた本が綺麗に整頓されていた。



 被害者は几帳面だな。



 市川はそう考えると「それは事件と関係ないだろ」と口に出して自分を叱った。
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