仮面
 部屋に一滴の血も落とさないように計った犯人が、わざわざ人目につくようなことをするのだろうか。



 市川は思わず顔をしかめて膝を使って頬杖をついた。




「まぁ。そんな上手くいくわけねーよな」     



 捕まってから犯人の異常性やら調べていけば金になるだろ。



 市川はそんな風に自分に言い聞かせ、再び机に戻って今朝見ていた資料を手に取った。        


 それから数時間後、夜の報道番組を見ていた市川は頬杖をついて顔をしかめていた。



 放送局が新たに仕入れた情報によると、遺体から大量の血が抜き出されていて、心臓は後から抜き出された可能性があるということだ。




「・・となるとどうにかして上田の意識をなくして、血を抜いた・・・」




 言葉にすると不可思議過ぎるあまり、市川は思わず鼻で笑った。



 ありえないだろ。



 頭に過ったのはその言葉だった。
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