仮面
 さらにニュースによると、部屋の中には争った形跡もなく、またアパートの近所の住人に訊ねても不可解な物音や声などは聞かなかったようだ。



 この分だと・・目撃者も出てくるか怪しいな。  


 市川はそんな予感を抱きながら、ニュースを食いつくように見ていた。   


 そして市川が気づいた、部屋に被害者の血が飛び散っていない点などを記者が口にし、次のニュースへ移った。



 部屋には争った痕跡もなく、被害者の血は飛び散っていない。




「となるとやっぱ・・場所が違うんだろな」




 もし部屋の中で相手と争うことなく血を奪い去れるとしたら、吸血鬼くらいだろうと市川は思い、また鼻で笑った。



 吸血鬼なんてガキじゃあるまいし。



 そんな呆れたような表情を浮かべていた市川であったが、おもむろに机の上に広げていた資料をまとめてファイルの中に入れた。
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