仮面
 そんな住人との2回目の顔合わせが、まさか死体の状態とは夢にも思わなかっただろう。




「あーと、彼の情報で気になるというか・・頭に残っている話とかありますか?何でも良いので」    



 市川のその質問に大家は「うーん」と長い唸り声を上げ、少しの間考え込んだ。



 その考え込みようから上田の情報乏しさが伝わってきて、市川は苦笑いを浮かべながら大家が口を開くのを待った。




「あーそうそう。何年か前の話だけどね、上田さんの隣に住んでた学生さんの話なんだけど」      



 その学生の話によると、ある夜に友人数人と夜に酒盛りをしていると、突然上田が訪問してきたらしい。


 そして「研究の邪魔なんだよね。死にたいの?」と呟くように言い、睨んでブツブツと独り言を言いながら帰っていったということだ。
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