仮面
「研究・・ですか」   


「そう。何しているのかはわからなかったみたいよ」



 狭い部屋の中でできる研究を市川は考えたが、たいしたものが頭には浮かばなかった。



 何かに入れ込み、それを「研究」と位置付けているのかもしれない。



 ゲームを完全に攻略することもある種の研究と呼べる。




「えっと、あと上田さんのところに訪問した人物とかわかりませんか?」




 研究のことはおそらくそれ以上知っているとは思えず、市川は次の質問に移った。



 大家は「よくわからない人だからねぇ」と言って、また考え込む姿勢をした。



「あぁ、そうそう。学生さんの話だと、部屋から女性の泣き声が聞こえたみたいよ」          


「泣き声?テレビと間違っていたりしませんか?」



「あたしもそう聞いたんだけどねぇ、いやたしかに女の泣き声だって、学生さんがね」
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