仮面
 市川は考え込むうちに「硫酸」という言葉に引っ掛かった。



 その事件の約一ヵ月前に違う県で、猟奇的な殺人事件があった。



 それは死体が全裸で、頭が胴体から切り離されていて、顔を硫酸で焼かれていた事件だった。



 そのことを思い出し市川は即座にその新聞記事をネットで検索した。



 そこで被害者の名前の近くに25歳という年齢が表記されていて、思わず「あっ」という声を市川は上げた。



 銀行員だった男に殺害されたとする2人の被害者も同じ年齢だった。



 さらに調べを進める中でこの3人の被害者は同じ故郷であること知って、市川は慌てて自分の机の中からある新聞記事の切り抜きを取り出した。



 それは市川が住む県で起こった殺人事件の切り抜きだった。



 市川が住む県で起こったのは、当時25歳で看護婦だった女性が、自身が勤めていた病院の入院患者に交際を迫られ、断り続けた結果無理心中を図られた事件だ。
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