仮面
 それから小さなため息を漏らした川本は、知っているという3人について語り始めた。



 野村は上田が大学卒業後に勤めた生命保険会社の同僚で、上田に金をいくらか貸していたそうだ。



 教授というのは、上田が専攻していたゼミの教授で、同一人物であれば名前は坂井というそうだ。



 鎌田に関しては、いつどこで知り合ったのかはわからないが、大学4年生の頃に上田の会話に突如出てきたそうだ。



 野村と鎌田の連絡先は知らないが、坂井教授なら簡単にアポを取ることはできるだろうと川本は言った。



「クロサワって方は、本当に心当たりありませんか?上田さんのメモにカタカナで書かれていたんですが」



 川本はすぐさま「知りません」と言い返したものの、市川が「以前上田さんは何か言っていませんでした?」と食い下がると、彼女は眉間にしわを寄せながら考える素振りをした。
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