仮面
 それから少し経って、川本は何かを思い出したように目を見開いた。    



「2ヵ月くらい前に、妙な電話があったと・・たしか毅が言っていました」




 市川は思わず目を輝かせた。



 自分の推測の範疇に、突然の電話での接触があったからだ。



 やはり電話か。




「あっ、そういえば川本さんは何曜日に彼と会う予定だったんです?」




 市川はメモの写しに目を向けながら、川本に問い掛けた。



 すると彼女は眉間にしわを寄せて「土曜日の午後です」と呟いた。



 すると市川は驚いたように「へっ?」と言葉を漏らした。



 土曜日の午後は死体となった上田を、大家と市川が目撃した曜日だ。




「実際は行けなくなって日曜日に行こうと、金曜日の夜にメールを送ったんですが・・」




 そう言って彼女は顔を下に向けて体を小刻みに揺らした。         


 連絡はなかったわけか。そんときにはたぶん死んでいたのかもな。
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