仮面
 事件発覚から2日経ったが、目撃者がいないようだ。



 各局、元刑事をコメンテイターに迎えて、専門家の意見を伺っていた。



 市川は鼻で笑った。



 競馬じゃねーんだからよ。



 ブラウン管の中で推理を繰り広げる元刑事達を、市川は冷ややかな目で見ていた。



「警察は何をしている」「民間人の垣根が高くなった」などと言って警鐘を鳴らしているつもりだ。



 時代のせいにしてばかりで動こうとしないところを見ると、現代人と何ら変わらない。



 そう思いつつも市川は、各局で推理を披露する元刑事達の発言を熱心に聞いていた。




 それから数時間が経ち、市川は大学に向かうべくアパートを後にした。



 最寄りの駅から電車に乗り、一回乗り継ぎをした。


 車があればこんなことしなくていいのに。



 電車に揺られながらそう思い、市川は若干不貞腐れていた。
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