仮面
　大学の最寄りの駅に到着すると、大勢の若者が駅に押し寄せていた。



　ちょうど最後の講義を終えた直後なのだろうか、大学に通じる道に若者が列を成していた。　　　　　　


　そんな若者の集団の流れに逆らうかのように、市川は大学に足を進めた。




「初めまして。ジャーナリストの市川です」




　大学に着くと市川は受け付けを済ませ、事務員に案内してもらい坂井教授の研究室を訪ねた。　　　　　


　市川がドア付近であいさつをすると、坂井教授は「坂井です」と一言だけ口にして市川を奥に招き入れた。



　奥に通されるなり市川が名刺を差し出すと、坂井教授はあからさまにため息を吐きながら名刺を受け取った。



・・何歳くらいかね



　坂井教授は目を覆うほどに前髪が長く、それを軽く七三に分けていた。　　　


　顔立ちや服装などからは若さを感じさせたが、ほとんどが白髪であったせいか見た目では年齢を推測することは難しかった。
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