仮面
 黒縁の眼鏡の奥で睨みつけるようにして見る目に市川は気がついた。    


 随分と警戒されてるな。


 その目は苛立っているというより、警戒しているように市川には見えた。




「単刀直入にお尋ねします。上田さんといつ会う予定でした」




 相手の警戒心を解こうともせず、市川は率直に質問をぶつけた。



 市川は目の前にいる坂井教授を、どんなことをしても警戒心を解かない部類の人間だと判断したからだった。




「先週の火曜日ですが」




 坂井教授はふてぶてしくもそう言い放ち、口を閉ざすとまた市川を睨むようにして見た。       


 果たしてどこまで話してくれるものか。



 目の前に立つ男は、自分が誘導していかなければ、たいしたことのないことばかり口に出しそうな感じを市川は受けた。
< 45 / 106 >

この作品をシェア

pagetop