仮面
 そして坂井は臨床心理学を教えている教授だ。



 臨床心理学がどんなものかは市川はわからない。



 しかし「心理学」と付く学問の教授である坂井が、密かに自分の心理分析をしているのではないかと考えていた。



 そんな坂井を相手に、何か有益な情報を聞き出せるのか、市川は不安に思っていた。         



「どんな用事で、卒業された彼と会ったのですか?」


「私用です」



「そうですか・・それにしても不思議だ」




 簡単に逃がすかよ。




「何がです?」



「卒業されてから随分経つというのにも拘らず、


 教授と元生徒が会うというのは、私にはとても不思議です。


 それほど親密な関係だったのですか?」



「親密・・親密というよりは、年の離れた友人でしたね」



「友人。なるほど。


 それなら彼から何か聞いていてもおかしくないはずですよね。


 誰かに殺されるかもしれないなど」
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