仮面
「しかし妙な方でしたね」


「妙?」



 市川が怪訝な表情を浮かべると、坂井教授は不意にテーブルに一本のボールペンを置いた。




「クロサワさんが忘れていった物です」



「はぁ。誰もが持っていそうなペンですね」



「えぇ。しかし彼はそこまで隙のあるような人間ではなかった。無論私個人の意見ですが」




 坂井教授は浮かない表情をして、テーブルに置いたボールペンに目を落とした。           


 心理学者としての意見なのか、一般的な意見なのか。



 市川はそれを考えることをせず、クロサワの忘れたボールペンの活用方法を考えた。



 故意に忘れたとき、何かメリットはあるか?



 ボールペンを取りに戻ると、また坂井教授と接見できる。



 あとは・・
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