仮面
 皮肉なのか、本心なのか坂井教授はそう言って咳払いを2回した。




「簡単に言うと、心理的問題の解決やその方法を考える学問といったところですね」



 市川は「なるほど」と言って、簡単に手帳に記した。           


 そんなとき、唐突に扉を2回ノックする音が響き渡った。         



「すみません、先程お伺いしたクロサワです」




 坂井教授が出迎える前に扉を開けた男は、そう名乗って部屋に入ってきた。




 おーシナリオ通りに来てくれるねぇ。




 市川は昂ぶる気持ちを押さえるように、拳を握り締めてゆっくりとクロサワの方に顔を向けた。



 たしかにヤクザだな。・・いや殺し屋か。




 市川が座っているソファーの斜め前に立つクロサワは、何か異様なオーラをかもし出していた。
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