仮面
 そして煙を吐き出し終わると黒沢はゆっくりと市川に顔を向けた。




「何か言っていました?坂井教授」




 市川はきたな、と思いながらも、


「いやー何も。何か隠しているとは思うんですが・・黒沢さんは何か得ましたか?」


 と冷静に質問を投げ返した。



 すると黒沢は嘲るように鼻で笑い、「何も聞けなかったからあなたに訊ねているんです」


 と言って下を向きながらタバコの煙を吐き出した。


 その姿に市川は思わず、おっかねーなと漏らしそうになったが、何とか喉元で止めた。



 その淀んだ空気の中、市川はおもむろに、


「上田さんのこと、以前からご存じだったようですね」           

 と自分が知り得た事実を黒沢に投げつけた。



 その言葉に黒沢は一瞬、目を見開いたが、すぐに平静を取り戻し小さな笑い声を上げた。
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