仮面

　その言葉を聞いて坂井教授は、咳き込むように笑い声を上げた。




「あなたでも知らないことがあるんですね」




　嘲笑する坂井教授をよそに、黒沢は立ち上がり


「あー市川さん、警察に連絡してもらってもよろしいですか？死ぬとは思うんですが、念のために」


　と言って市川に顔を向けてぎこちない笑みを浮かべた。



　市川は戸惑いながらもその場で携帯電話を取り出すと、


「部屋の外でお願いします」


と冷静に、少し冷徹に言って笑みを浮かべた。



・・何か聞き出す気だな、そうはいかねーぞ。




　黒沢の態度に苛立ちを覚えた市川は、携帯を握り締めたまま部屋の外に出て、ドアのすぐ近くで立ち左耳で黒沢と坂井教授の会話に聞き耳を立てた。




「言葉通り裁きを決める者のことです」



「裁定者ってのは、ゼロか？」



「さぁ。私にもわからない。誰も知らない」