仮面
・・ゼロ。誰かを指した番号か?



 市川は携帯電話を片手に持ったまま、しばらく部屋の様子をうかがっていた。



「そうかい。・・やっぱりあいつが関わっているのか」




 黒沢は悲しげにそう呟くように言ってうつむいた。


 うつむいたが、その口は徐々に吊り上がっていき、その横顔はまるで悪魔のようだった。



 その表情を薄らと捉えた坂井教授は、心臓が今にも止まりかけているのにも拘らず、死の恐怖を感じていた。



「まぁあいつが関わっているんだ。あんたがこうなるのも計画通りなんだろ?」


「・・そうですねぇ。殺人鬼は最初から殺人鬼じゃない。・・一人殺すことから始まる」



「それが上田に、あんたか。そんなにゼロを崇拝してどーすんだよ」




 その黒沢の吐き出すように言った言葉に、坂井教授は口から血を吐き出しながらも大きな笑い声を上げた。
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