仮面

・・足音くらい立てろよ。


　そう思いながら黒沢の後ろ姿を見送ると、制服姿の警察官が２名、廊下の向こうから早足で近付いてきた。



　それからしばらくの間、警察官に事のいきさつを、無論タバコを吸いに行ってきたときには坂井教授は血を流して意識を失っていたという嘘を吐いたが、淡々と伝えた。　　　　　　　


　それが終わってようやく帰ろうとした市川の前にスーツ姿の男が現れて、階段を下りようとする市川の腕を唐突に掴んだ。




「ちょっといいですか？」



　ぶっきらぼうにそう言った男は、ジャケットから警察手帳を取り出し市川の顔に押しつけるようにして見せた。




「なんですか？」




　突然腕を捕まれたせいなのか、不機嫌そうにそう言った市川は、自分の目線程度にある原田の顔を睨むようにしてみた。