仮面
「第一発見者はあんただけ?」




 そう言って原田は目を見開いて市川の目を凝視した。



 唐突に「あんた」と言われたものだから、市川はさらに苛立ち「あっちの警察官にそう言ったけど。なに?」と乱暴に言い返した。



「・・あんただけねぇ。嘘はよくないと思うけどねぇ」




 原田はそう言いながら市川の目を睨みつけ、それ以上尋問することなく坂井教授の部屋の方に消えていった。



・・何様だと思ってんだよ、警官は。



 ぶつぶつと不平を言いながら市川は大学を後にした。



 それにしても黒沢は一体何物だ?



 一方的な質問ばかり坂井教授に投げ掛けていたが、その質問は全部、的を射た質問だったようだ。



 つまり坂井教授や上田の存在、それに背後にいる「ゼロ」という誰かのことを知っていたことになる。



 それだけじゃない。



 坂井教授も黒沢の存在をたしかに認識していた。



 それだけじゃなく、おそらく上田もそうだった。
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