仮面
 もしかすれば大学構内に身を潜めていた可能性もある。



 4階まである建物だったから、身を潜めようとすれば幾らでも潜むことができる。



 そうなると犯人はその日に予め坂井教授を殺す計画を立てていたことになる。


 そして偶然に、市川と黒沢が坂井教授を訪ねることになった。




「偶然・・ねぇ。出来すぎた偶然だなぁ」




 偶然その日、警察官でもない部外者の3人が各々の目的を持って特定の人間の所に足を運んだ。



 そんな偶然がそこまで簡単に重なることがあるのだろうか。



 皆無だとも言い切れないが、市川はその偶然が誰かに操作されているように思えて仕方がなかった。



「・・・気にし過ぎか・・」




 そう呟くと市川は気怠そうに首を回した。



 今日一日、何を調べていこうかと悩んだ。



 野村に再度連絡入れることも考えてみたが、しつこく感じさせて敬遠される可能性もあるから、あと何日か待つことにした。
< 73 / 106 >

この作品をシェア

pagetop