仮面
　個人的に会おうとしているのは、何か裏があるに違いないと察したからでもあった。



　それから、名刺を持ち合わせていなかったこともあり、メモ帳を携えていた原田が自分の電話番号と、市川のそれをメモし、自分の番号が書かれたメモを市川に渡した。



　それで２人が別々の方向に歩いていったわけではなく、朝日に照らされながら男達は肩を並べながら同じ方向に歩いていった。




「あんた、なんでこんな朝にいるんだ？」




　無言のまま歩いている中で、先に口を開いたのは市川だった。



　スーツの内側のポケットに手を突っ込みながら、


「上田のメモに坂井さんの名前があってね。それで伺おうとした矢先に殺されて・・現場に行ったらあんたがいたからね」


　と気怠そうに原田は答えた。



・・そりゃそうか。



　そう思ったものの、鼻から息を噴射し


「それで尾行していたわけか・・警察も忙しいね」


　と皮肉とも捉えることができる言葉を市川はわざと口にした。
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